2013年10月16日水曜日

「シェルダリング・スカイ」強すぎる愛の旅



愛が強い。
愛が強過ぎる。
心がふるえる。
なんて素晴らしい映画なんだ。。。
これこそ映画だ!!!

監督のベルナルド・ベルトルッチ曰く。
これは複雑なカップルの単純なストーリーだ。二人は互いに激しく愛しているのに、幸せになれない。

時は1947年 ───。
喧騒の都会を離れ辺境の北アフリカを訪れた主人公夫婦のポートとキット。二人の愛はすれ違い、やがて行き場を無くし、砂漠を彷徨い始める。

生活から遠く離れた美しく荒々しいアフリカの地。
旅を続ければ続けるほどに二人は悲劇の運命に突き進んで行く。

この映画の素晴らしさは、主人公たちの複雑な感情が説明のセリフやナレーションなしに、眈々としたストーリーと演出による映像によって、ジンジンと伝わってくるところだ。
わたしたちは、ここに居ながら、遥か遠いアフリカの焼け付く砂漠の砂塵を感じることができる。
アフリカに着いたその晩、売春を行うジプシーの見張りの男たちに捕まるポート。
ポートが病気になった街で、迷路のような街中を走りホテルを探すキット。
病に落ち熱にうかされてアフリカのトランスに落ちる踊りを夢見るポート。
どんどん裸になっていく二人。
熱にうかされたような二人。
全てを捨て去っていく二人。

これは哀しい旅だ。
なのに、僕はこの旅がいつまでも続くことを望んでいた。
旅を続け、悲劇に陥るほど、愛が強まるのだ。
二人の焼け焦げてなくなりそうになりながら、激しく鼓動し続ける感情が、画面からほとばしる。

だが、強い愛の行き着く先は、死という恐ろしい別れであった。
死の間際、ポートはキットに告げる。
「ぼくはきみのために生きている。やっと気付いた」
そんなこと言いいながら死ぬなよ!
キットはポートの死に、自らの存在価値を見失う。
旅の途中、一人きりになってしまうキット。恐ろしさに呆然となる。

偶然、ラクダで物資を運搬する男たちに出会い、一団に加わり、再び砂漠の旅をはじめる。
これがトラベラーの本当の始まりだった。

魂が抜けたキットを受け止めてくれる砂漠の、圧倒的な美しさといったらない。
同じ砂漠の景色が、二人のドラマによってどんどんと変わって行くのを目にして、本当に感激してしまう。

原作のポール・ボウルズ曰く。
空は明るいと思われているが実は黒い
空の向こう側に行けばわかる
空を信じてはいけない
人類を闇から守ってるというだけだ
空の向こう側は闇だ

ぼくらはどこからきて、どこにいくのだろう。
ぼくらは満月をあと何回見れるだろう。
1000回?
500回?
確実に判っていることはその数は無限ではないことだ。
わたしたちは、生きる術を求め、ポートとキットのように、このまま帰らない旅へ旅立ってしまうべきなのか。
自由に生きることほど難しいものはない。

キットのように、失ってしまうなら愛などいらないのだろうか?
答えはNoだ。
いかなる時も人は愛し続けなければならない。
強く、どこまでも強く。

人生に迷ったのか?
Yes
ならば「シェルダリング・スカイ」にしやがれ!



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